世の中、コミュニケーションがとりにくい人っていますよね。あまりにも噛み合わないと相手に問題があるのか、ちゃんと相手の意図を汲み取れない自分に問題があるのか、だんだんわからなくなってしまいます(笑)
誰でも職場や学校で、もしくは家庭でそんな体験をしたことがあるはず。
医療現場でも、そういったコミュニケーションの問題はもちろんあります。今日は医療従事者と患者さんのコミュニケーションについてのお話しです。
あのお医者さん、家族と話かみ合ってないよ?
こういう人、たくさんいます(笑)
特に頭の回転が速い人の場合、A→B→C→Dと順序づけて話すよりも、A→Dでしょ?と経過を省略して結果だけ話すことが多いので、その思考回路についていけないと「?」となってしまいます。
まあそれでも医療従事者同士で話していれば相手が汲み取ってくれるから会話は成立します。
問題は家族に病状説明する場面とかですね。お医者さんの説明の仕方に飛躍があると、最初は相槌を打っていたご家族もだんだん無口になり、お医者さんだけぺらぺら話して終了・・・なんてことがよくあるんです。
私も仕事柄、たくさんのお医者さんのIC(informed consent)に同席してきましたが、初期研修医(いわゆるルーキーです)の先生なんかは途中で話がこんがらかって、結局指導役の先生が代わりにほとんど説明していることもありました。
これはPTの世界でも同じことで、患者さんに対する説明が下手なPTってけっこう多いんですよね。本人が自覚しているとまだいいんですが、自分の説明はイケてると思ってるとなおタチが悪い(笑)
話がわかりにくい人の三つの特徴
①基本的に性格はすごく真面目
まず性格は真面目な人が多いですね、基本的に。
逆にいうとユーモアに欠けるところがあるので、相手に緊張感を与えがちです。
②普段からその業界の専門用語ばかり使いがち
これは医療従事者にはかなり多い気がします。
「検査の結果○○○は否定的ですから・・・」
「基本的に予後不良な疾患なので・・・」
「治療的投与という形で抗菌薬を使用して・・・」
こういう表現って一般社会ではあまり使わないいわゆる医療専門用語なので、患者さんやその家族へこういう言葉を使っても通じなかったり、誤解されたりすることがままあります。
③「相手に伝える」ことではなく「自分が話す」ことが目的になってしまっている
これ一番大事です。本来話す、つまり情報を言語化するということは「その情報を相手に伝える」という目的を達成するための手段であるはずなんですが、その手段自体が目的になってしまっているという。
こうなってしまうと相手は置いてきぼりです(笑)
誰か間に入ってフォローしてあげないといろいろな不都合が生じてきます。
伝える力とは「言い換え力」
相手に伝えることが目的ですから、「相手が理解できる言葉を使って」話すことが求められます。
ここで重要なのが、「言い換え力」。
「うっ血による体液量増加により心不全が増悪し・・・」
→「身体の中のお水の量が増えすぎたことで、心臓に元気がなくなってしまって・・・」
というような言い換えです。
相手に伝えることが目的ですから、患者さんが高齢の場合さらに単純化した言い換えにすることもあるでしょう。
こうした「言い換え」の引き出しをたくさん持っていて、相手の理解力や精神状態に応じて臨機応変に使い分けられる人が、私の考える「話のわかりやすい人」です。
突然ですが、向田邦子の作品を読んだことありますか?
「父の詫び状」「阿修羅のごとく」などが代表作です。私はけっこう好きで昔から彼女の作品は愛読しています。
彼女の文章には、まどろっこしい表現はなく、軽快でテンポがよいので本当にすらすらと読み進められます。
彼女の紡ぐ文章のように、簡単な言葉だけど何か心に響く、そういう話し方ができると理想だなと私は思います。
こうやってブログを書くのもそういった意味ではいい修行ですね(笑)それではまた。