理学療法士の職業病ってなんだろう?

「職業病」って言葉、仕事してると時々会話に出てきませんか?

例えば「歯医者さんがドラマを見ているときに俳優の歯並びをいちいちチェックしてしまう」とか、「警察官はプライベートでも周りの車のナンバープレートを必ず確認する」とか。

今回取り上げている「職業病」とは「引越し屋さんが腰痛になる」とか「政治家が握手しすぎて腱鞘炎になる」という意味の本気の病気ではありませんので、お間違いなく。どんな職業でも仕事柄、身体に染み付いている習慣のようなものを指しています。

最近とある出来事をきっかけに、自分自身の職業病について気づかされる機会がありました。

今日はそんな理学療法士の職業病についてのお話です。

PTの職業病いろいろ

あえて単純化した言い方をしますが、理学療法士とは基本的に病院などでリハビリをしています。相手にしている患者さんは皆さん、大なり小なりなんらかの機能障害をもっています。

運動麻痺があったり、骨折していたり、膝が痛かったり、すぐに息切れがしたり・・・千差万別です。

そういう人たちの動作とか姿勢を常に評価しているので、プライベートでもその目線はついつい出てきちゃうんですよね。

私や私の周囲のPTの体験談でいうと・・・

・街を歩いている人を見て、「あの人の母趾に荷重が乗ってこないのは骨盤のアライメントが・・・」などと歩行評価をしてしまう。

・松葉杖を逆についていたり、杖の高さが合ってない人がいるとその場で声をかけて動作指導してしまう。

・高齢者や車椅子の人に自然とドアを開けてあげたり、道を譲ったりする

(これはいい職業病ですね)

などなど、挙げていくとキリがありません。

でも一番の職業病といえるような身体に染み付いた習慣は、私の場合は違うことだったんです。

私の職業病とは

とある日曜日。

私は娘二人と妻と公園に行って遊んでいました。

もうすぐ2歳になる下の娘は、ここ1か月ほどでだいぶ足腰の筋力がアップしてきており、その公園にある滑り台の階段も腕の力を使いつつなんとか一人で登っていました。

その日は4月ですが気温が28度くらいまで上がっておりかなり暑い日。

3回繰り返し滑り台を滑って、娘は少し疲れた様子。しかし休まずにそのまま4回目の滑り台へ。階段を少しよろよろしながら昇っていきます。

「ん?』ここで理学療法士のセンサーが発動。

遠位見守り→近位見守りへ距離を詰めたその時・・・

階段で足を踏み外した娘が、くるっと回りながらスーパーマンのような格好で下に落ちてきます。

危ない!このまま行くと顔から階段に落ちて、大怪我になってしまう!

・・・危ないところでしたが間一髪で下からキャッチ。事無きを得ました。

ということで、私の職業病は常に「(一緒にいる相手が)転んだときにすぐ支えられる位置にポジションをとってしまう」だったことに気づきました。

「転んだ時に支えられる」とはどういうことか?

リハビリ中、理学療法士が常に意識していることは「患者さんを転ばせてはいけない」ということです。これは学生時代の実習からみっちり叩き込まれます。

リハビリの現場では普段杖で歩いている人に、訓練では杖なしで歩いてもらったりすることがよくあります。要は普段よりちょっと難しいことをして運動学習を効率的に行い能力アップを図るんですが、当然普段よりふらついて転ぶリスクは高くなります。

そのため、この人はどういう状況になったらどういう風に転ぶのか?ということを常にシミュレーションして、その評価のうえでPTは患者さんのどちら側に、どのくらいの距離感で立っていればいいのか?を決めるわけです。

話を公園に戻してみましょう。

・気温が28度でかなり暑い。

→脱水リスクあり。同じ動作でも体力消耗早い

・3回繰り返し滑り台を滑って、疲れた様子だがそのまま4回目へ

→現在の全身持久力、筋持久力から考えるとやや過負荷

・すべり台の階段を昇る様子が少しふらつきが大きい。

→疲労感が動作の変化として出現している。転ぶとしたら昇段時に足が段に引っかかり後方に落ちてくるだろう。

というような評価があって、「3m離れていた見守りの距離を1mにする」という判断になったわけです。

つまり「転んだ時に支えられるポジションにいるかどうか」というのは「しっかり(患者さんの)機能、動作、環境因子、個人因子を評価できているか」とイコールなんですよね。

これはPTの学生さんや、新人PTの方に何よりも肝に命じて欲しいポイントです。当たり前ですがしっかりとした評価なくしてリスク管理も治療もありませんので。

私は10年もそうした思考パターンを毎日繰り返してきたので、すっかり職業病の域に達してしまいました。

ということで、娘の大事なお顔が怪我しなくて本当によかったという結論でした(笑)それではまた。

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