【伏線回収だけじゃない面白さ】「カメラを止めるな!」レビュー

家ではたまにDVD借りて映画観るんですが、いちばん最近映画館で映画を観たのはいつ?と聞かれてもパッと出てきません。小さい子どもがいると、やっぱり映画館からは足が遠のきます。

桐島…これ2012年だったんですね。インパクトがあったので最近な気がしていましたが。同調圧力というものについて深く考えさせられる作品ですね。映画館で2回見ました(笑)

あっ、思い出した。直近で映画館で観たのはクリント・イーストウッドの「15時17分、パリ行き」でした。これは怖い怖い映画でしたね。本物の事件の当事者をそのまま俳優として使うという掟破りなキャスティングも話題になりました。

最近のイーストウッド監督ものはだいたい観てます。「ジャージー・ボーイズ」とかも意外とよかった。地元のマフィアのボス役で出てたクリストファー・ウォーケンがいい味出してました。

イーストウッドの師匠筋にあたるドン・シーゲル監督が大好きなんですよね。下に挙げたような代表作はどれも最高です。

えーっと、だんだん話が逸れてきました。

今日は巷で話題の「カメラを止めるな!」を観にいったらすごく面白かったよ、というそんなお話です(笑)

一部ネタバレありますので、未見の方は気をつけてくださいね。というかこの映画、まったく前知識がないほうが絶対に楽しめますので。

前半戦はひたすら違和感ばかり

この作品について語られるときに必ずといっていいほど指摘されるのが、前半部分の伏線を後半で回収していく構造的な面白さについてです。

また脱線しますが(笑)、個人的には伏線回収の巨匠といえばビリー・ワイルダーです。「アパートの鍵貸します」での伏線の張り方とその回収の仕方は、まさに「洒脱」としか言いようのない感じです。

で、「カメラを止めるな」の場合、そんなにおしゃれな伏線ではありません。もっとなんというか、ゴリゴリしています(笑)。

映画を観終わってなんかこの感じ前にも見たことある!とずっと考えていたんですが、思い出しました。M-Iグランプリ2001の麒麟の漫才の感じにすごく似てるんです。

これ覚えてる人、いますかね。ダウンタウン世代のお笑い好きアラフォー男子は覚えているはず(笑)。最初の2分間はわざと凡庸な(笑いが起きない、むしろザワザワする)内容にして、後半の2分でそのフリをすべて回収するという。松本人志に「ここまでで一番面白かった」と言わしめた伝説のネタです。

構造として一番近いのはこの麒麟の漫才なんじゃないかと思いました。ただしその前振りである前半部分の約40分がワンカット長回しという(笑)。

観ている方は後半に回収されることなんて意識してませんから、だんだん不安になります。映像のほうも手持ちカメラがブレすぎてだんだん酔ってきそうなくらい。こんなのブレアウィッチ・プロジェクト以来ですよ(笑)。

ほとんどの観客の頭にでっかい「?」を植え付けたところで前編終了。

観終わった今になって考えると、ここで大きな違和感を与えるほど、後半の盛り上がりは大きくなるのでここは変な感じになるほど映画的にはいいんです。

この前半の嫌な感じが、ほんとに麒麟の漫才の最初の2分にそっくりでした(笑)

そして後半へ

さて、前編の伏線をうまく回収してかつ映画的なカタルシスに持っていくまでに残り50分くらい。時間がありません。

ここから、この映画が作られるまでのいわばメイキング的な展開に入っていきます。この後半、やたらテンポいいんです。

余計なことは語らない、あとは察しろよ、っていう演出です。監督のうだつの上がらない感じとか、家族関係とか、プロデューサーの軽薄な感じとか、飲みすぎちゃうおじさんとか全部最高ですね。いろいろ匂わせるんだけど、語りすぎない。

こちらが想像する隙間をうまく残してくれてます。

この多くを語らない演出、実はドン・シーゲル、クリント・イーストウッドにも共通した語り口なんです。そういったところも観ていて気持ちいいところでした。はい、ここでブログ前半の伏線が少し回収されましたね(下手)

ラスト15分くらいは怒涛の伏線回収といってもいいでしょう。まあだいたい誰かがミスったり寝てたり物を落としたり、お腹痛くなったりという人為的なミスが続発して、ああいう変な空気になっていたということがバラされるだけなんですが(笑)。

一つ一つのネタが全部綺麗に落ちていて、コメディーとしても一級です。

なんで最後に感動してるのか

で、手叩いてみんな爆笑してるんですが、最後に観終わったときにはちょっと泣き笑いというか、なんならちょっと感動してる自分がいるんですよね(笑)。

なんでこんなにこの作品が観る人の心を打つのか考えてみたんですが。

いちばん大きな要素は監督(この作品の監督という意味です)の視点がしっかり作品の中に出ているからではないかと。

いろいろ大人の事情があって思うようにうまくいかない、我慢しなきゃいけない、妥協しなきゃいけない。みんな自分のことばっかり考えて勝手なことばっかりワーワー言ってる。でも結果は出さなきゃいけない。責任は自分にある。時間がない。

まさにこの映画の後半はずっとそういう状況なんですが。

これ誇張されてはいますが、まさに私たちが普段仕事で日常的に感じているストレスそのものじゃないですか?(笑)

つまり、「そういううまくいかない時にどうするの?あきらめるの?」という私たちへの問いかけでもあるわけです。

惰性と譲歩だけで要領よく生きてていいのかよ!という何気にけっこう強烈なメッセージがあるんですよね。

だからこそラストの人間ピラミッドの部分は笑えるし、泣ける最高のシーンになっているんだと思います。

低予算のインディー映画ということで話題になっていますが、やっぱり映画って制作費やら宣伝やらお金かけたから面白いってわけじゃないんだなと改めて感じました。

前半の伏線をまとめて後半で回収する構造的な面白さと、社会の閉塞感や停滞感に対するこの監督独自の視点が相まって、なんとも痛快な作品になっているのではないでしょうか。DVDで観るよりも是非劇場でみんなで盛り上がって観て欲しい作品です。

最後になりますが、映画館で観客があんなに手を叩いて笑ってる体験、初めてでした。後半はほぼ爆笑に次ぐ爆笑。全部終わってから改めて拍手も起こってましたからね。

それだけ、観た人を特別な気持ちにしてくれる作品なのだろうと思います。

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